水素水コラム
2016年、これまでの水素水研究の歩みと今後の方向性
2015年末に「バイキング」や「ゲンキの時間」など、影響力のあるメディアで特集されたことがきっかけで、水素水の世間での認知度は急上昇しています。
現在、ちょっとしたブームになっており、水素水を飲み始めたり、水素風呂を始めたりされた方も多いです。
しかし、「なんとなく健康や美容に良さそうだから飲んでみる」という方も少なからずいらっしゃり、
水素水の大きな可能性について、理解が浸透しているとは必ずしも言えない状況です。
そこで本コラムでは、多くの方が水素水に興味を持ちはじめたこのタイミングで、
2016年までの水素水研究の歩みと、今後の方向性について総括しました。
水素研究の始まり
水素が生物に及ぼす作用が最初に報告されたのは1975年。
当時の研究は現在の水素水ではなく、気体の水素ガスを使った研究が主流でした。
腫瘍(=がん組織)を「水素2.5%、酸素97.5%、8気圧」という特殊な大気条件下で培養することで、癌が退縮するという内容でした。
その後、水素49%、ヘリウム50%、酸素1%の割合で酸素ボンベを作ることで、深海ダイバーの減圧症と窒素酔いを効果的に予防できることが発見され、
2001年には、高圧水素がマウスの慢性肝炎を抑えることが報告されました。
2000年代中頃になると、水素水を使った研究に徐々に増えてきました。
自然界に存在する原子の水素(=いわゆる”活性水素”)という概念が提唱され、
「活性酸素が悪玉活性酸素を無毒化するのではないか」という仮説のもと、水を電気分解した”電解水”を使った研究が行われるようになったのです。
2005年には東北大学と日本トリム社が共同で臨床試験を行い、
電解水の人工透析への効果を検討、初めてヒトを対象とした研究も行われました。
電解水を使った研究では、一定の抗酸化効果が見られたものの、
原子状の水素(=いわゆる”活性水素”)が通常条件下で安定的に存在することは物理的に考えにくく、科学的な仮説として致命的な欠陥がありました。
これに対し、2005年にMiz株式会社が分子水素を高濃度に溶かした水(=現在の水素水)に高い抗酸化作用があることを発表。
電解水による抗酸化作用は、実は水を電気分解した際に生じる分子水素による影響であると考えられるようになったのです。
今日では、水素水を飲むことで得られる様々な効果は、
原子状の水素(=活性水素)ではなく水素分子によって起こっているという考えが定説となっています。
水素水研究が活発になったきっかけ
水素水の研究が今日のように活発に行われるようになったのは、
2007年に日本医科大学の太田成男教授が発表した論文(下の写真参照)がきっかけです。
その論文では、脳梗塞を発症したラットに1%から4%の水素ガスを吸引させたことで、脳のダメージを大幅に軽減させたことが示されており、
脳のダメージ軽減に悪玉活性酸素であるヒドロキシルラジカルの無毒化が深く関わっていると報告されました。
この論文が米系医学雑誌のネイチャーメディシンで掲載されたことから、
世界的に大きな注目を浴び、水素研究が飛躍的に加速しました。
現在の研究の状況
上述の2007年の太田教授の発表以降、水素分野の研究が世界的に注目され、一気に加速しました。
現在は年間50本以上のペースで関連論文が発表され、2015年7月時点で発表された論文数は300本を優に超えています。
論文を発表した研究機関の国籍は中国が最も多く、次に日本、アメリカと続いています。
研究対象はかつて主流だった水素ガスは全体の20%前後と少なく、水素水(水素点滴を含む)を使った研究が60%以上と最多。
試験対象はラットやマウスなどのげっ歯類が75%以上を占め、次いでヒト(=患者)への臨床試験が10%以上。
動物実験だけでなく、ヒトへの効能検証も積極的に行われている状況です。
これらの研究の中で、水素の抗酸化作用、抗炎症作用、抗アポトーシス作用などが明らかになりました。
そして、ほとんどの病気は細胞の酸化や炎症、アポトーシスによって引き起こされることから、
水素の持つ優れた作用が特定の疾患に対して有効であろうと考えられるようになったのです。
こうした考えのもと、すでに28の医学分野、135の具体的な疾患に対して研究が行われており、
水素水(もしくは水素ガス)にて水素を摂取することで、良好な結果が報告されてきました。
今後の方向性
水素が生体に対しどのような影響を及ぼすのか、細胞及び動物実験レベルでわかることはほぼやり尽くしており、
今は、ヒトに対してどれくらいの効果があるのかを検討する段階にきています。
2008年以降、水素水(もしくは水素ガス)を使った臨床試験が増えており、
2008年〜2009年で各1件ずつ、2010年で2件、2011年で3件、2012年で5件、2013年で9件、2014年で6件、2015年で6件のペースで報告されています。(下のグラフ参照)
そして、現在進行形で進んでいる臨床試験が3件、準備中のものが10件あり、
今後もヒトを対象とした効能検討が積極的に行われていく予定です(下の表参照)。
【2015年6月時点】現在行われている、もしくは今後行われる予定の臨床試験スケジュール
登録日 | 対象疾患 | 実施施設 | 状態 |
---|---|---|---|
2011/01/11 | 長期血液透析 | 福島医科大学 | 試験実施中 |
2011/06/02 | 急性脳梗塞 | 防衛医科大学 | 参加希望患者を募集中 |
2011/12/04 | 急性心筋梗塞 | 慶応大学 | 参加希望患者を募集中 |
2012/10/16 | 進行性核上麻痺 | 順天堂大学 | 試験実施中 |
2013/02/13 | パーキンソン病 | 順天堂大学 | 参加希望患者を募集中 |
2013/05/01 | 慢性障害肺疾患 | 順天堂大学 | 試験実施中 |
2013/05/20 | 肝硬変 | 岡山大学 | 準備中 |
2013/11/22 | 蘇生後症候群 | 慶応大学 | 参加希望患者を募集中 |
2014/07/01 | 急性心筋梗塞 | 国立国際医療研究センター病院 | 参加希望患者を募集中 |
2014/07/29 | くも膜下出血 | 防衛医科大学 | 参加希望患者を募集中 |
2014/08/01 | 肺移植 | 大阪大学 | 参加希望患者を募集中 |
2014/10/27 | 網膜動脈閉塞症 | 日本医科大学 | 参加希望患者を募集中 |
2015/07/03 | 2型糖尿病 | 東京都健康長寿医療センター研究所 | 参加希望患者を募集中 |
これらの多くは参加患者数が数十人程度の小規模な試験です。
しかし、これらの試験で良い結果が得られれば、患者の母数を増やしより大規模な試験に移行することができます。
事実、2013年に順天堂大学でパーキンソン病患者に対する小規模な臨床試験が行われ、
水素水飲用によって症状の進行が抑えられたという結果が得られました。
これを受け、同大学ではより大規模な臨床試験を準備し、先日、試験の実施許可を国に申請しています。
最後に
冒頭でも述べた通り、今は水素水がブームなっており、かつてないほどに注目されています。
しかしながら、メディア主導の流行のため、話の旬が過ぎると共に今のブームも収束していくでしょう。
では、ブームが去ったら水素水も廃れるのかというと、そうではありません。
なぜなら、水素水の本当の実力が世間に認知されるのは、今から数年〜十数年後の未来だからです。
今でこそ先進医療を担う一部の大病院でしか取り扱いのない水素水ですが、
臨床試験データが積み上がることで、公的にもその効能が認められ、
一般の臨床現場や各家庭で当たり前のように飲まれる時代が来ると当サイトは考えています。
そうなれば、水素水は今よりさらに身近な存在になることでしょう。